薬をもっともっとと欲しがった女性に天才セラピストは何をしたか?

NLPの創始者の1人である
ロバート・ディルツ氏が話されていた、

心理療法家ミルトン・エリクソンの
エピソードトークをお伝えします。

こちらの内容はロバート・ディルツ氏が、
日本で初めてスライト・オブ・マウス
(リフレーミングの14のパターン)
について講義された時、

その実例として話して下さった内容であり、
とても印象に残った、

天才ミルトン・エリクソンならではの
ユニークなエピソードです。

<薬をもっともっとと欲しがった女性に天才セラピストは何をしたか?>

世界的な天才心理療法家ミルトン・エリクソンの元には、拒食症や対人恐怖症といった悩みを持つ人が彼を頼って訪れました。

今回ご紹介するケースは、ガン治療を受けていた思い込みの強い40代女性のお話です。

彼女は、ガンの治療を受けており、痛みを和らげるための薬を「もっともっと」と、医師が必要と感じていた以上の量を要求し、医師、看護師さんを困らせていました。

あまりにも薬を要求するので、痛みを和らげるために医師は心理療法家のミルトン・エリクソンのところに行くように、彼女を促しました。

エリクソンの所を訪れた彼女は、痛みについて色々話をします。

「医者は、痛み止めは効いているはずだっていうんです。私は、ちょっとの痛みも嫌なの。だからもっと薬を出して欲しいのに、くれないんです。」等々。

そこで、エリクソンは「痛い思いをされているんですね。それはつらいですね。」と承認の言葉をかけます。

彼女は言います、「そうなんです!そんな痛みはないはずだって言うんですよ!私は痛いのに!」と。

他にも、エリクソンが「その痛みを感じるのはどんな時ですか?」と聞くと、「自宅のベットで横になっている時です。」と答えました。

この後もしばらく痛みの話を聞き、承認した後、エリクソンは彼女に聞きます。

「少し想像して欲しいのですが、もし、あなたの寝室のベッドの下におなかをすかせて、よだれを垂らした虎があなたを見つめているとしたら、

その瞬間その痛みはどうなりますか。その痛みは感じますか?」

すると彼女は、「そんなものがいたら、痛みなんか感じません。先に逃げなきゃと思います。」と言います。

ミルトン・エリクソンは続けます。

「では今後もし、薬を飲んでも痛みを感じそうな時に、ベッドの下に虎がいると想像したら何が起きますか?」と聞くと、

彼女は、ハッとして「そう考えると痛みを感じないわ。これ、いいわね。今度からそうするわ。」と言って明るい表情で帰っていきました。

それ以降、彼女は痛み止めをもっとくれと医師に言わなくなりました。

 病院のスタッフは何でそんなことになったんだろうと、全く理解できませんでしたが、
彼女は「ベッドの下に虎がいるから大丈夫。」と、 それしか言わなかったそうです 。

さて、ミルトン・エリクソンは、いったい何をしたのでしょうか。

薬を飲んでいる彼女にとって、それでも感じる痛みは想像上の思い込みから起こる痛みだったようです。では、どうすればその思い込みから解放されるのか。

エリクソンは、「想像上の痛みを上回るものは何か」と考え、空腹の虎を使ってみたのです。結果彼女は、ベッドの下に虎がいると想像することで、その痛みを感じなくなったのです。

対話だけで出てきた結果ですが、痛みを和らげるということ以上に、その痛みを忘れるぐらいのものは何なのかということをうまく使った興味深いお話でした。

このエピソードから私たちが学べることは、ミルトン・エリクソンのように患者に限った話ではなく、

顧客や友人、家族といった身近な人に対しても、相手の思い込みをただ間違っていると否定し、変えようとすることは効果的ではないということです。

相手を変えようとするのではなく、「なぜ相手はそのように思い込んでいるんだろう」とよく見て、まず理解しようとすること。

そして、相手の気持ちを理解した上で、その思い込みを無理に変えたり、説得しようとするのではなく、そう思い込んでいる相手の気持ちを緩めたり、

もっと別のものに視点を向けるサポートがどうしたらできるのかと考え、行動していくことが大切なのではないでしょうか。

私達がコミュニケーションでうまくいかない時、まさにこの視点が抜けてしまっていることが多く、相手を変えようと説得しようとしてしまうことがあるのです。

例えば私で言えば、前職の塾の講師時代に「地域のトップ高校に受からなければいけない。落ちた自分には価値がない」と思い込んでいる生徒がいました。

勉強はしているのですが、必要以上のプレッシャーを自分に課してミスを多発する。そんな状況でした。

入試模試では、読み間違いをしたり、後から考えたら分かった問題も慌ててしまい解けず、目標点に届かずに落ち込むということが繰り返されていました。

ある時面談で私が「勉強頑張っているよね。でも結果が出ずに苦しいよね。トップ校に行きたいよね」と言うと、

涙目で「先生、そうなんだよ。自分でも嫌になるよ。トップ校に行かないといけないのに、結果が出ない。オレどうしたらいい?」と聞いてくれました。

そこで、「トップ校に行くこと大事だよね。そして、その先の大学とか、就職とか続くと思うけど、どんな大人になって、どんな人生を生きていきたいかを考えていくこと。

何より、人に影響を与える人は、今の苦しみとか合格したときの喜びとか、そういったものを沢山経験して乗り越えて、自分だけの人生を楽しんでいる人じゃないかなって思ってるよ。」と伝えました。

すると彼は黙って暫くその場で考え、「おれトップ校に行きたいけど、苦しいけど、ちょっと楽になった。できる限りのことをやってみる。」と言い、帰っていきました。

その翌日から起伏の激しかった彼の雰囲気が少し変わり、集中力が以前より増したように見えました。

その後の模試ではミスも減り、最終的に見事第一志望に合格。合格後すぐに彼は、

「めちゃくちゃ嬉しいけど、ここはスタート地点。もし受かっても落ちても行きたい大学行くために頑張るって決めてたから、大学入試へ向けて今から勉強を頑張る。」と言ってくれました。

このような相手の思い込みを変化させ、行動まで変えてしまう14パターンのリフレーミングスキルが学べるトレーニングを、

ロバート・ディルツ氏はNLPのセミナー内で分かりやすく講義してくださいました。

NLP-JAPANラーニング・センター
NLPトレーナー 後藤昭雄